【書評】第1回本屋大賞受賞作品「博士の愛した数式」を読んで少し自分が嫌になった件

 

博士の愛した数式 (新潮文庫)

博士の愛した数式 (新潮文庫)

 

 



芥川賞作家小川洋子さんの代表作「博士の愛した数式」を初めて読んでみた。

元々、本屋大賞自体にあまり興味がなく、自分の好きな作家の作品や書店で気になった一冊を読むというスタイルなのだが、最近、好きな作家の作品は読み尽くしてしまったし、「気になる!」と思う本もなくなってきた。

そこで、まずは直木賞芥川賞よりもビギナー向け?な本屋大賞作品に目をつけて、その第1回受賞作品の「博士の愛した数式」を読むことに決めたのである。

 

読んでみて、まず思ったのが全体を通しての主題である「数式の美学」というものにいまいちピンとこない‥。

博士が家政婦やルート(家政婦の息子)に対して、数字のロマンや数同士の関係性の美しさを熱心に説明するのだが、どれも共感できないのである。

高校中退で勉強が苦手な家政婦も博士に触発されて、どんどん数学の素晴らしさやロマンに気付いていく(息子のルートも同様)。しかし、私はそんな二人とは対照的に物語の最後の最後まで、「数学の美学」に気づくことができなかった‥。

 

それが、すごく悲しい!!

だって、学生時代に赤点取りすぎて、校長室で勉強させられたこともある大の勉強嫌い&おバカの私には、一生わかることのできない世界だと思ったから!

作品の世界にある何遍もの感動ポイントを素通りしてゴールインしても骨折り損のくたびれ儲けだよ!

 

しかし、「数学の美学」は理解できない私でもこの作品が名作だというのはよくわかる。家政婦の慈悲深さやルートの大人顔負けの気遣い、博士の不器用だけれど温かい優しさには、こちらもホッコリさせられたし、「80分しか記憶がもたない数学博士」を主人公に据えた物語は新鮮味や意外性もある。

 

最後に気になった点だが、博士の義姉との関係性は結局どうだったんだろう?義姉とは恋愛関係だったのか?。もし、そうだったのならポップで心温まる話が急にドロドロした話に変わり、物語の世界観が台無しになってしまうかもしれない。この小説の素晴らしさを損ねないためにもあまり気にしないでおこう。