2020年本屋大賞作品「流浪の月」の感想と心に響いたセリフを紹介!

 

流浪の月

流浪の月

 

 



【あらすじ】

幼い頃に父を亡くし、母に捨てられ、伯母と暮らすことになった更紗は、息が詰まるような日々を送っていた。

そんな時に、公園でいつも見かける大学生の木村文に助けを求め、生活を共にすることになる。

一緒に暮らすことで幸せを手にすることができた更紗だが、行方不明者として世間から騒がれ、文は誘拐犯として逮捕されてしまう。その事件から15年後、二人は再会するのだが、またしても世間の常識や正義が彼女達を追い詰めていくことになる‥。

 

【読んだ感想】

現在、話題沸騰中である著者;凪良ゆうさんの「流浪の月」を読んだ。マイノリティな人にとっては、すごく心に突き刺さる小説なのではないかと感じた。私たちは、多数派の意見や常識に影響され、知らず知らずの内に自身の価値基準に投影されていく。以前よりは多様性を受け入れる世の中になってきていることは間違いないが、社会生活を円滑にするためには、ある程度は主義や価値観が均一でなければならないことは事実だ。

異端な存在となる更紗や文はそんな世間の均一化した価値観に疎外されてきた。だからといって、私はそんな世間に嫌気がさしたわけではない。正直、更紗と文の苦悩や心の内は複雑過ぎて、他人には理解しようにもできないのではないかと思う。もちろん、彼女達の境遇や苦しみに同情するし、最後に彼女達なりの幸せの形を見つけることができて本当に良かったと思う。

私もこれからは幸せの定義や世間の常識に囚われず、更紗や文のような何にも形容することができない「幸せの形」があるという事を信じて生活していこう。そして、自分の心の叫びにもっと正直になろう。

 

【心に響いたセリフ】

 

「相手に好かれたいとさえ願わなければ、人間関係に憂いはほとんど生まれない」

 

「結婚したら、どんないい男も点数下がっていく一方なんだよ。男から見た女も一緒。結婚って相手の点数が下がってくシステムなの。でもお金の価値は変わらないよ」

 

「お正月も、お盆も、クリスマスも、誕生日も、大型連休も、ひとりで過ごす。地震が起きても、わたしはひとりで逃げる。ある日、病気が見つかって余命告知を受けたりなど。わたしはその短い期間をひとりで過ごす。身寄りがないというのは、そういうことだ。けれど、あえて言ってしまおう。それがどれほどのことだ、と。(一部割愛)」

*彼氏の元を離れ、ひとりで生きる事を決めた更紗の心の声。

 

「ひとりの方がずっと楽に生きられる。それでも、やっぱりひとりは怖い。神様はどうしてわたしたちをこんなふうに作ったんだろう」